目 次
どのような業者が関わるのか
どのような業者が関わるのかお話ししていきます。
自分でできる部分は自分でやって、業者に委託する部分は委託しながら、あなたの貴重な時間を有効活用していきましょう。
【関わることになる主な業者】
不動産屋
行政書士・建築士・消防設備士
リノベーション・インテリアのための内装業者や工務店
家具家電の搬送や立ち上げのための業者
運用代行業者清掃業者
これらの業者は、あなたの宿泊物件を完成するための大切なパートナーたちです。
成功には優秀なパートナーが欠かせません。
①不動産屋
宿泊物件開業のために物件の契約をします。不動産屋で、物件の売買契約や賃貸借契約を結びます。あなた自身が大家で、自分の物件を使うのであれば必要ありません。
②士業
法律面や申請手続きについては、専門家である「士業」に依頼できます。
1から勉強するには長い期間がかかってしまうので、依頼することをおすすめします。
自分で申請がやりたいという方や、法律面を詳しく学びたいという方は、拙書『買わない不動産投資ドル箱宿泊所』に詳しく記載してありますので、そちらをご参照下さい。
ホテルの開業でかかわるのは、行政書士・建築士・消防設備士の三種類の士業です。
開業するためには、三つの法律をクリアする必要があります。
1:旅館業法
2:消防法
3:建築基準法
まず、行政書士に連絡します。
行政書士とは、許認可等の申請書類の作成や提出手続き代理などの仕事をしている有資格者です。
行政書士は、1の「旅館業法」についてあなたの代わりに担当してくれます。
2の「消防法」。これに詳しいのは消防設備士です。
物件で火災があって人身事故があるといけないので、消防対策が必要とされます。
消防法の基準を満たすため、防災専門業者に依頼して消火器や火災報知器などの設備を設置する必要があります。
3の「建築基準法」は、建物自体の基準法です。
こちらに関することは建築士に相談します。
建築士とは、建築物の設計及び工事監理を行う職業の有資格者です。
物件を見てもらい、申請の書類として必要な書類を作成してもらいます。
③リノベーション・インテリア
物件が古い場合、工務店に頼んでリノベーションをしてもらいます。
壁紙を替えたりして内装のグレードを高めると集客につながるので、内装業者と打ち合わせして進めます。ハイセンスなインテリアを整えるためにデザイナーに頼むこともあります。
もちろんこれらは、やってもやらなくても構いません。
こだわりの部分です。DIYを趣味としている人は、楽しみながら自分でやってみるのもいいでしょう。
④家具家電立ち上げ
便利屋や引越し業者に頼みます。
あなたが購入した家具家電を、部屋に搬送したり、組み立てたり設置したりする必要があります。
自分でやってもいいですが、重くて手間がかかるので私は業者に委託しています。
⑤運用代行業者
物件の運用を代行するオペレーション会社です。
宿泊ゲストの集客、予約・問い合わせ対応、価格の設定など、全てのオペレーションを任せることができます。
あなた自身は一切何もせず、全部丸投げで代行してくれます。
収益に関しては、毎月その業者から入金があるので、あなたは銀行口座の確認をするだけです。
⑥清掃業者
ゲストの滞在にあたり、部屋のベッドメイキングや清掃が必要です。
自分で清掃してもいいですが、大変なので私は業者に委託しています。部屋や水回りの掃除、リネンの洗濯と交換、アメニティの設置、切れた電球の交換など、全て丸投げでやってもらえます。
清掃完了後は、部屋の写真を撮って確認用に送ってもらえます。
以上、これらが関わる業者です。基本的にシステム化されているので、あなた自身は本業で忙しくても、頼みたいことを適宜業者に委託できます。
その人は「何の専門家なのか」きっちり区分けをする
業者に仕事を依頼する際に重要なことは、「その人は何の専門家なのか」ということを、しっかりと区分けして考えることです。
よくある例を挙げてみます。
あなたがホテルを始める際、最初に物件の許可申請に関して行政書士に相談したとします。
行政書士とは、あくまで行政への申請手続き業務をしている専門家です。投資をしているわけでもなければ、経営に詳しいわけでもありませんが、業界界隈にいるので全くやったことがなくてもわかっている気分になり、「この物件は儲かると思いますよ」などと言ってしまう方も中にはいます。
そして、それを鵜呑みにしたあなたがその物件を購入し、無事物件に許可は降りたものの「運用しても全然儲からなかった」というような話が出くるわけです。その士業の方に悪気はありません。起こってしまった原因は、あなたが「聞く人を間違っている」からです。
清掃業者に不動産について聞いたとか、内装業者にホテルについて聞いたというのも同じことです。
その人(業者)それぞれの専門分野があるため、その分野に関してのみアドバイスを受けるようにしましょう。
当たり前のことのように聞こえますが、リアルの場になると混同してしまうことがあるようなので、忘れないようにお伝えしておきます。
業者を選ぶ際のポイント
例えば内装工事をするとして、高い業者も安い業者も色々あると思いますが、いくつかの業者に見積もりを依頼して納得できるところで選びましょう。
ただ、やりすぎると選ぶのも大変ですので、3社くらいがいいのではないかと思います。
1社だけでは判断材料に乏しく、それが適正価格なのかわからないため、複数の業者から見積もりをとることを意味し、「あいみつ」と呼ばれます。
個人的には、あまり安さの観点で選んでいません。投資物件を完成させるためのパートナーですので、ただ安いだけで適当だったり、知識がなかったりすれば、結果としてデメリットが多くなります。それよりも、経験豊富で信用できる業者に依頼したいところです。
そして、あいみつをする際に重要なことは「同じ条件」で提示することです。
同じデザインでも使う材料のグレードが違えば費用が異なるのは当たり前ですので、同条件で具体的に依頼してください。
見積もりをもらったら、そこに何が含まれているのか確認することを忘れないようにしましょう。
単に安く見せかけてあっても、後から色々と追加費用で頼まなければいけなくなれば元も子もありません。
いくつかの業者に見積もった場合も、会社によって含まれているサービス内容が異なりますので確認しましょう。
大前提としては、相手の時間を大事にしましょう。
業者も、現地の下見をしたり、見積もりを作るにも時間や労力がかかります。正式に依頼するわけではなくあいみつである場合は、先にそのことを言っておいた方がいいでしょう。
納期を確認すること
業者に業務を委託する際は納期を確認しましょう。
先ほどの工事価格の話とも関係しますが、ホテルは開業しないことには始まりません。
工事費用が安いからといって時間がかかってしまっては、逆に機会損失になってしまいます。
工事費は少々高くても、完成が早い業者の方が、早く施設をオープンして宿泊費で稼げるため、結果としてプラスになることもよくあります。
各業者への費用の相場
関わる業者について、費用の相場をよく聞かれるのでお伝えします。もちろん業者によってまちまちなので、あくまでも平均的な価格です。
『行政書士』
許可申請にあたる行政書士への報酬は、小さな旅館業施設の申請の場合35万円くらい、大型ホテルの場合100万円くらいが相場です。その士業によってバラバラですが、概ねこれくらいだと思います。
『不動産屋』
不動産屋での契約にあたって、賃貸の仲介手数料は上限が賃料の1ヶ月分まで、購入であれば物件価格の3%+6万円が仲介手数料です。
『運用代行業者』
運用代行業者への手数料は、売上げの15%〜20%が相場です。毎月の売上げに対して運用手数料を支払います。基本的に利益に対してではなく、売上げに対してというところが多いです。たくさんの物件をまとめて委託した場合、スケールメリットで手数料を下げてもらえたりすることもあると思います。
ただし、この「代行手数料」に関しては、目先の数字にとらわれないことをおすすめします。確かに手数料が安い業者もあるのですが、そもそも論で、高い売上げを上げてもらわなくては意味がありません。
例えば、手数料20%の業者Aと、手数料10%の業者Bがあり、同じ物件を預けたとします。
Aの業者が優秀で、1物件あたりの月売上げが60万円とすると、手数料は12万円で、差し引くと48万円が残ります。一方、Bの業者は見かけの手数料は安いものの運用能力が低く、1物件あたりの月売上げが30万円だったとします。すると、手数料は3万円で、残りが27万円です。結果として、あなたの利益は手数料20%のAに頼んだ方が、毎月21万円多いということになります。
選定基準として、業者にマンパワーがあるかどうかや、運用実績、スタッフが経験豊富か、24時間対応しているのかなどをヒアリングするのがいいでしょう。
注意点として、素人の方に多いのが、自分の物件の情報を複数の業者に渡してシミュレーションを依頼し、シミュレーションが高かった業者で選ぶというやり方です。
実力の品定めをするつもりであっても、数字だけならいくらにでも書けますから、これでは実際のところあまり意味がありません。
似たイメージで言えば、家を売却したい時に複数の不動産屋に査定を出して、査定が高い業者にお願いしたいというような心理でしょう。
しかし、その価格で売る保証までしてくれるというわけではありません。紙ペラ一枚で選ぶのではなく、その会社の実績や実態を見て選ぶのがいいと思います。
『清掃業者』
清掃業者は、「1回あたりいくら」でやっているところが多いです。月単位で支払いをしますので、頼んだ回数分の請求です。
1ルームであれば1回5000円くらい、100㎡くらいの広い物件であれば1回1万円くらいが相場です。平米数によって代金を決めている業者が多いです。
業者への「値叩き」は長期的に見て得ではない
・価格交渉には注意
値段を叩くということは、つまりは相手の利益を薄くするということと同じです。
場合によって、値叩きに応じてくれるところもあるかもしれませんが、相手にとっては気持ちの良いものではないので、次回以降はそのような人とは取引きしたくないでしょう。
値叩きで安くなったことによって儲けものだと思うのは消費者的な発想であり、長期的に見れば実は逆だったりします。
業者との関係は、専門知識を教えてもらったり、手助けしてもらいながら、ホテル物件完成まで協力していく大切なパートナーです。
気持ちの良い取引きができない人にはいつまでたっても協力者がいないので、次回に取り組む際も、毎度毎度ゼロの状態でメンバー探しからやらなければなりません。
1件だけやるのであればいいのかもしれませんが、2件、3件と拡大していきたいのであれば、成功から遠のくでしょう。
何事もそうですが、やはり信頼関係が一番大事です。